気の弱い僕が、勇気を出してみたときの話。

高校生の時の話なんですけど。

 

その日は休日で、めっちゃ暇だったんですよ。

 

 

 

 

 

予定もないし、これと言ってやることもない。なのでまぁダラダラしてたんですけど、ダラけ過ぎると逆に辛くなってくるじゃないですか。しかも僕、中学生の時はバスケ部で休日も練習してたんですよ。

 

だから余計にこのダラダラが落ち着かないな、ってなってたんです。

 

で、それなら軽く運動でもしようかと思って。家からちょっと行ったところにバスケットゴールがある公園があったので、そこでバスケすることにしたんです。一人で。ここで誰か誘うってことをしないあたり、僕っぽいですね。むしろ誰かと遊べ。バスケはもってこいだろ口実として。

 

それでいっちょ前にやる気出して、わざわざジャージに着替えて、ボールを自転車のかごに突っ込んで、公園に行ったんです。

 

中学の時からよく来てる公園でしたからね。もちろん部活の友達と一緒にバスケしたり、それに飽きたら自転車でドリフトとかよくやってたんですよ。ペダルを漕いで後輪を滑らすことに白熱してましたね、当時。ちょっとまって思い出がホント中学生っぽくて涙出てくるわ。

 

 

 

で、一人でバスケをするわけですよ。

 

ドリブルしてシュートして、最近やってなかったからゴール外れたりなんかして。フリースローラインみたいなのも一応引いてあったんで、そこでシュートフォームを確認しながら打ってみたり。

 

まぁ適当です。思うがままーにバスケをしてたんですよ。ダラダラしてて重かった体も徐々にほぐれてきて、汗ばんだりもしてきてね。「やっぱり体は動かさなきゃだめだなー」とか思いながら、それなりに楽しくなってきてたんです。

 

 

 

そしたら、おっさんが来たんですよ。

 

 

 

今まで何度もその公園で、友達とワイワイやってたこともあるんです。そんな時には一度もやってきたことはないのに、その日は来たんですよ、おっさんが。まっすぐ僕に向かって。

 

 

 

そして「うるさい」と。

 

「お前のバスケがうるさくて眠れない」と。

 

 

  

聞けばおっさんもお休みで、休日くらいゆっくりしたかったらしい。見ればタンクトップ… いやランニングシャツ… いやもうジジシャツにステテコで、あからさまに休日の疲れてるお父さんだったんです。疲れたお父さんガチ勢。あのオーラは多分ランキング上位。

 

そんなガチ勢にポケモントレーナー並の間合いの詰められ方をされたんで、申し訳なくなったんですよ。気が弱いですからね、僕。ホント怒られたらすぐ「自分が悪い」と思っちゃってすぐ謝るんです。お疲れのところ悪いことしちゃったなぁって。

 

 

 

 したらね、おっさん、まくし立ててくるんですよ。

 

 

 

僕が早々に謝ったもんだから、「こいつは反抗してこない」って思ったんじゃないですかね。もーそこから「いつもうるさいと思ってた」とか、「ゴールを撤去してほしいと役所に言ってる」とか、日ごろ溜めてきた公園への鬱憤を僕にぶつけてきたんですよ。

 

初めのうちは僕も悪いことをしたと思ってますからね、その鬱憤をちゃんと聞いてたんですよ。はい、はい、すいません、はい、そうですよね。とかそんな感じで。

 

でもあまりに止まらないもんだから、徐々にムカついてくるわけですよ。「うるさいって、公園はそういう場所だろ」とか、「そもそも、もうお昼になるけどお前まだ寝てたんか」とか思い始めてきたんです。

 

これはもう反抗してやろうと。

 

ちょっとこのおっさん怒らしてやろうと。

 

普段そんなこと全然思わないんですけど、気が弱い僕でもさすがに我慢できなかったんですね。何か一矢報いたい。このおっさんの鬱憤晴らしに、ただただやられてなるものかと反骨精神を高ぶらせていったんです。

 

 

 

そしたらおっさんがひとしきり話し終えて、帰ろうとしたんです。おっさんに反抗するチャンス、ここしかないと思って。

 

背を向けたおっさんに「あの」と声をかけ、「もうちょっとやっていってもいいですか?」と言ったんです。

 

つまり僕はやめないと。あんたにまだうるさいと思わせてやると。そんな気持ちを込めておっさんに言ったんですよ。

 

 

 

 

 

そしたらおっさん。

 

 

 

くるっと振り返って、

 

 

 

「その言葉を待っていた!!!」

 

 

 

って言ったんです。

 

 

 

 

 

すっごい笑顔なんですよおっさん。「いいねぇ君!」とか、「そういう風に言って欲しかった!全然やってって!」とか言い出すんですよ。もーすっかり上機嫌。そのまま帰っていったんですけど、来た時の足取りとぜんっぜん違うの。ウッキウキで帰っていきやがるの。

 

もうポカーンですよ。マジで( ゚д゚)こんな顔になりながら、おっさんを律義に見送っちゃったんですよ。こっちが武器持って、「かかってこい!」ってなった瞬間に、あっちはそれまで振り回してた武器捨てましたからね。事態が把握できない。しかもなんだったら、最後「俺はお前を試してましたよ」感出してってなかったかあのおっさん。

 

でも僕も僕で「もうちょっとやっていっていいですか?」って言っちゃってますからね。やってみたんですよ、バスケ。これがなんっも楽しくない。ただの暇つぶしでやり始めたバスケだったのに、いつの間にかおっさんに許されたバスケになってるし。「やりたい」って言ってるあたり、「バスケに熱心な少年感」も出しちゃってるし。軽音楽部なのに。中学でバスケ辞めてるのに。

 

 

 

 

 

結局早々に切り上げて、家でダラダラしなおしました。

 

 

 

 

 

こんなにしっくりこないバスケをやったのは、あの時が初めてでしたね。更新することは確実にないでしょうね。

 

みなさんも疲れたおっさんに怒られたら、お気を付けください。

 

試されてますよ、それ。